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札幌高等裁判所 昭和31年(ネ)196号 判決 1957年3月06日

控訴人 被告 土屋建設株式会社 代表取締役 菊地栄光

訴訟代理人 海老名利一

被控訴人 原告 多田正具

訴訟代理人 小寺叔輔

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取り消す、被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、原判決事実らん摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

控訴人が昭和二九年一二月一三日訴外菅原建設株式会社に対して、金額一四七、九〇〇円、満期昭和三〇年一月三〇日、支払地、振出地ともに札幌市、支払場所株式会社北海道拓殖銀行札幌南支店、受取人らん白地の約束手形一通を振り出し、被控訴人が支払拒絶証書作成期間経過後である昭和三一年一月中訴外会社から引渡により右白地手形の譲渡を受けて自己の名をもつて受取人らんを補充し現にこれを所持していることは当事者間に争いがない。

控訴人は、被控訴人が本件手形の譲渡を受けたのは支払拒絶証書作成期間経過後であるから、右譲渡は指名債権譲渡の効力を有するに過ぎないところ、控訴人に対してはなんら債権譲渡の通知がなされなかつた、したがつて、被控訴人は本件手形債権の譲受を以て控訴人に対抗し得ない旨抗弁する。しかしおよそ、約束手形が受取人らん白地で振り出された場合、その振出を受けて所持している者は、支払拒絶証書作成期間経過後でも、自己の氏名を受取人として記載しないで、引渡によつてその白地手形を他に譲渡しうるものであつて、この場合においては民法上の指名債権の譲渡の場合のように債務者に対する対抗要件をふむ必要はないものと解すべきであるから、控訴人の右抗弁は採用の限りでない。

されば、控訴人は被控訴人に対し本件手形一四七、九〇〇円およびこれに対する訴状送達の日の翌日であること記録上明かな昭和三一年二月一〇日から完済まで商法所定の年六分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるものといわなくてはならない。

よつて、右と同旨の原判決は相当であつて本件控訴はその理由がないから、民事訴訟法第三八四条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 猪股薫 裁判官 臼居直道 裁判官 立岡安正)

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